about

free word

問い 6

「建てる」前後には何があるの?

「建築」と聞くと多くの人は、建物をデザインして図面を描き(設計)、施工(工事)し建物を完成させる、という一連の流れを思い浮かべるでしょう。それが建築の主軸であり、これからも変わらない、あるべき姿です。

しかし、実は「建築」というプロセスの前後には、現在進行形で発展している、とても大切な世界が広がっています。ここを考えなければ、これからの時代に建築の力を発揮することはできません。

これまでの社会は「建てること」が優先せれてきたと言えます。経済が成長していたころは、とにかく新しい建物を次々に建てていくこと自体が目的でした。

しかし令和の日本は状況が大きく変わっています。人口が減り、空き家や使われなくなった建物が増える中で、単に建てればいいという時代は終わったのです。

これは単なるアイデア出しではなく、社会の変化を見極め、人々の暮らし方を想像し、資金や土地の条件をにらみながら形を定めていく、とても奥深い作業です。たとえば「この町には子どもが減ってきているから、大きな学校を新しく建てるのは本当に正しいのか?」とか、「空き家が多い地域で新しい住宅を建てるよりも、既存の建物を直して活用したほうが地域の力になるのでは?」といった問いを立てるのが企画です。

実際、建てる前に企画がしっかり練られていなければ、完成した建物がすぐに使われなくなることもあります。逆に、よく練られた企画は、建物に命を吹き込みます。たとえば古い建物の1階を「地域のカフェ」に企画し直すと、建物そのものは古くても地域の居場所としてよみがえります。

では、いったい何を考えればよいのでしょうか。



まず「建てる前」にあるのが企画です。企画とは「何を、どこに、誰のために建てるのか」を考えるプロセスです。

<喫茶ランドリーの写真●>

ところが、建築の専門教育では長いあいだ、この「企画」を専門的に学ぶ機会があまりありませんでした。図面を描く訓練や建築史、構造、デザインの授業は充実しているのに、なぜその建物をつくるのか、誰のためにつくるのかを考える授業は少なかったのです。

私はこの点をとても大事にしていて、企画の力こそが未来の建築やまちを左右すると考えています。

そして建てた後には、「運営」という世界があります。たとえば図書館やカフェ、地域センターは、建てた瞬間に終わりではなく、そこからがスタートです。どんなプログラムを行うのか、誰が維持するのか、資金をどう回すのか。

こうした運営がうまくいけば建物は長く愛され、逆に失敗すれば立派な建物もすぐに空っぽになります。

では、建てる前の企画と、建てた後の運営を、建築の学びとどう結びつければよいのでしょうか。私は、設計の力を磨くだけでなく、企画と運営をつなぐ力を身につけることが未来の建築教育に必要だと思っています。

そして何より大切なのは、こうした学びや実践が未来に向いていることです。「建てる前後」を意識するのは、ただ難しいことを増やすためではありません。人口減少や社会変化という大きな波を乗りこなし、次の世代によりよい環境を手渡すための知恵なのです。

建築は、建物そのもの以上に、未来の社会の姿を映し出すもの。だからこそ、「建てる」だけで終わらない視点が求められているのです。

この問いを書いた人

不動産デザイン研究室

高橋寿太郎 教授

建築デザインと不動産技術を結びつける。
不動産デザイン研究室
不動産, マーケティング, リノベーション, まちづくり

この問いに関連する主な科目

  • XXXX
全ての問いの一覧へ