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問い 10

まちから人が減るとどうなるの?

「人口減少」という課題は、皆さんもニュースや授業で耳にする大きなテーマです。令和の大学生であれば、文系・理系を問わず、これが日本社会全体にとって避けられない問題だということは理解しているでしょう。

ジェットコースターに例えると、2008年の人口ピークの後10年は、ゆっくりした下り坂でしたが、このコラムを書いている2025年現在は、すでに絶叫が聞こえるくらいの急降下がはじまっています。そしてまだまだ、加速します。

日本全体の人口が減っているということは、多くの地域で人が減っているということです。では、「まち」から人が減ると、具体的に何が起こるのでしょうか。

まず想像しやすいのは、空き家が増えることです。これは地方や郊外だけの問題ではありません。神奈川大学の周辺でも、空き家は増えています。また東京都内の世田谷区のような高級住宅街でも、空き家が年々増えています。

問題は、そうした空き家が次から次へと手渡されていく仕組みが、まだ十分に整っていないことです。

さらに、空き家の増え方には特徴があります。

都市研究の現場では「スポンジ化」という言葉が使われます。スポンジ化とは、空き家が一律に、まんべんなく発生するのではなく、あちこちにかたまりのように生じ、まちの中に空洞が点在する状態を指します。この空洞が増えると、不具合が生じ、地域の活力が弱まりやすくなります。

空洞は、ひととひとのつながり(コミュニティ)も希薄にします。

私自身が学生だったころは、多世代の多様なコミュニティという視点や価値観に、あまり実感がありませんでした。まちは賑わいがあったほうが良いと思う一方で、同世代以外の人付き合いが得意ではなかったからです。

ですが、地域のコミュニティでできること、管理できること、自治できることは実は山ほどあります。市区町村は全国に1,700以上あり、「まち」という単位で見れば何万もの地域が存在します。その一つひとつが元気である必要があります。

日本は「島国」と言われてきたので意外かもしれませんが、見方を変えると日本は「大国」です。国土面積も、人口も、経済規模も、世界上位で、その巨大さを行政だけに任せるのはそもそも難しく、人口減少時代にはなおさら不可能です。

だからこそ、まち自らが立っていくことが必要です。それが本来あるべき姿なのです。

空き家が長く放置されれば建物は傷み、屋根や壁が崩れ、野良猫やタヌキなどの動物が住み着いたり、植物が繁茂したりします。景観は乱れ、治安や衛生の問題も生じます。

さらに、固定資産税などの税収が減ることで、道路や公園など公共施設の維持が難しくなるという行政上の課題も出てきます。

一方で、これは新しい動きの芽でもありますが、空き家を活用して、子ども食堂や地域カフェ、アートスペースが生まれる例も全国で増えています。

人が減ることは確かに大きな課題ですが、その分、空き家や空き地を使った創造的な試みがしやすくなるとも言えます。まちの将来を考えるとき、減少の影をただ恐れるのではなく、「ここから何ができるか」を探す視点が大切です。

まずできることは、皆さんの学びやアイデアも含め、わたしたちが考えるトライアルをみなで議論し、そして実行して、その結果をみんなで受け止め、またトライアルする、という文化を作ることだと思います。正のスパイラルと言ってよいと思います。

一方で負のスパイラルとは、議論せず、実行もせず、失敗したときの責任を追及し、チャレンジする意欲を削ぐものです。正のスパイラルが未来のまちを形づくる力になるのです。

この問いを書いた人

不動産デザイン研究室

高橋寿太郎 教授

建築デザインと不動産技術を結びつける。
不動産デザイン研究室
不動産, マーケティング, リノベーション, まちづくり

この問いに関連する主な科目

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この問いのヒントになるコンテンツ

『建築学科のための不動産学基礎』(学芸出版社・2020年)高橋寿太郎著

https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761527631/

『都市をたたむ』(花伝社・2015年)饗庭伸著

https://www.kadensha.net/book/b10033071.html
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