問い 15
まちは誰のもの?
まちは誰のものだろう。行政のもの? 町内会のもの? 地主さんのもの?
私たちは普段、その問いを深く考えずに暮らしています。道路がきれいで、公園が整い、街灯がいつの間にか直っている。それを「当たり前」だと思ってきました。けれど人口が減り、財政が縮む時代、行政サービスがすべてをカバーしきれなくなると、この問いは急に身近なものとして立ち上がってきます。
私たちは部屋に住み、家に住み、そしてまちにも住んでいます。部屋の模様替えをするとき、私たちは誰の許可も得ずに家具を動かします。家が壊れたら自分で直します。では、まちはどうでしょう。まちもまた暮らしの延長にある「生活の器」なのに、手を触れてはいけないように思ってしまう。でも本当は、もっと自由に、もっと身近にまちを扱っていいのかもしれません。
世界の都市では、住む人が自分たちの手で空き地を整え、古い建物を使い直し、道路脇に花壇をつくるような、小さな行為からまちを更新する動きが生まれています。ひび割れたコンクリートを剥がしてみたら、近所のおばあちゃんが勝手に植物を植えてくれる。店先に置いた小さなベンチに、知らない誰かが座ってひと休みする。誰かが関わると、別の誰かも関わりはじめる。その連鎖が、まちを「自分たちのもの」と感じさせてくれます。
まちは、所有の話だけで決まるものではありません。まちは、関わる人のものなのかもしれません。触ってみる、手を入れてみる、使いこなしてみる。そんな小さな一歩から、まちは少しずつ「わたしの場所」として立ち上がってくるのだと思います。

著者の事務所「壱番館」の前庭。地域に開かれた畑やベンチ、ブックポストなどが置かれている。
参考文献
『We Own The City ― 世界に学ぶ「ボトムアップ型の都市」のつくり方』
市民が空き地や建物を自分たちの手で再生し、都市の仕組みそのものを更新していく世界各地の実践を紹介した本。大きな計画よりも、小さな関わりからまちが変わっていくプロセスが、「まちは誰のもの?」という問いに新しい視点を与えてくれる。
この問いを書いた人
一級建築士事務所ara
アリソン理恵
一級建築士事務所ara代表、コーヒーショップMIAMIA、ギャラリーIAM店主。
建築と都市のあいだ、デザインと事業のあいだを行き来しながら、 小さな手入れや風景の気配から都市を考える。 ケアリング・アーバニズムという視点から、暮らしとまちに関わり続けています。
この問いに関連する主な科目
- まち再生演習Ⅲ
この問いのヒントになるコンテンツ
レイ・オルデンバーグ『サードプレイス ― コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』
参考文献
レイ・オルデンバーグ『サードプレイス ― コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』
家庭と職場の外側にある「第三の居場所」が、人々の幸福や地域文化を支えると説いた本。カフェや公園、理髪店など身近な空間がどのように"居場所"になるのかを、わかりやすく示している。
