問い 12
建物やまちのレジリエンス(生き延びる力)とは何か?
近年、地震や津波、豪雨などの災害が全国で頻発しています。このような状況下で、まちや建物には単に「壊れにくい」だけでなく、「壊れても立ち直れる力」が求められるようになりました。この“立ち直る力”が「レジリエンス(生き延びる力)」です。建築やまちの復興では、構造的な強さだけでなく、地域の歴史・文化・暮らしが再び息を吹き返せる仕組みを考える必要があります。

実例:宮城県気仙沼市内湾地区の歴史的建造物再建
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市内湾地区では、明治以降の港町の雰囲気を残す建物が多く存在していました。しかし、津波により多くが流失・損壊しました。特に「男山本店店舗」(国登録有形文化財)をはじめとする歴史的建造物は、地域の象徴的な歴史的景観をつくる重要な建物でした。
津波により建物の構造だけでなく、敷地、まち並み、生活基盤も大きく破壊された気仙沼内湾地区の再建プロジェクトでは、震災前の元の形に戻すことだけではなく、レジリエンスを実現する為に次のような課題への対応が必要となりました。
・記録だけでなく記憶を保存する建築技術と制度活用
・応急復旧と基盤整備
・資金調達の仕組みづくり
・再建スケジュールの調整
・法令への適合
男山本店店舗などを保存復原する際は、津波で流された部材の回収や、嵩上げ工事に合わせた 曳家(建物を持ち上げて移動する工事) が必要でした。この初動の僅かな支援で建物所有者の皆さんの意識が保存に大きく変化したことは特筆に値します。また、建物の歴史的価値や記憶を守りつつ建築基準法に適合させるため、文化財指定の特例を活用するなど、技術と制度を組み合わせた工夫が求められました。
社会的仕組みと信じる心もレジリエンスの一部
復興基金、民間寄付、クラウドファンディングなど、複数の資金源を組み合わせて再建費用を確保しました。これは 「建築技術」だけでなく、「建築を成立させる社会的仕組み」もレジリエンスの重要な要素であり、そして何よりも地域の人々がまちの再建を心から信じることが復興の力であることを示しています。
最終的に、気仙沼内湾地区では8棟の登録有形文化財が段階的に再建され、地区の歴史的景観が一部ではあるものの取り戻されました。男山本店店舗のように、一度失われた建物が再びまちなみの一部として息を吹き返したことは、「建物やまちのレジリエンス(生き延びる力)」が 「地域の記憶を未来につなぐ力」であることを象徴しています。

男山本店店舗被災直後

男山本店店舗復原
この問いを書いた人
株式会社ユー・エス・シー 代表取締役
兼弘 彰
建築学科非常勤講師/文化財建造物修理主任技術者/一級建築士
文化財や歴史的建造物保存の活動を通じて、
まちの記憶やアイデンティティーを未来へつなげます。
この問いに関連する主な科目
- まち再生演習Ⅳ