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問い 7

まちは誰がつくるものなの?

その昔、まちは誰がどのようにつくっていたのでしょうか?古代から近代にかけては、国や地域を統治する権力者、または、資本力をもった人が都市やまちを計画し、つくってきました。ただ、長い人類の歩みのなかでは、人が集まって自然発生的に形成されるケースもあります。また、古代よりはるか以前は、想像するに、数名が集まってグループを形成し、移動しながら狩猟を行い、共同生活を送っていたことでしょう。そのグループは、何がしかの利害が一致したり、狩猟の動き方で獲物が取りやすいなどといった相性のようなものがあったと思われます。そして、互いに集まって生活するときの「居心地の良さ」を共有していたのかもしれません。

互いに居心地が良い状況を現代でどうつくるのか、それは人類の大きな課題です。個人の単なる欲求や感情を満たすことではなく、社会として、あるいは一緒に生活を送るみんなにとって共通の理解であり、納得できる規範や行動が必要です。そういった、みんなにとっての(社会にとっての)利益を“公共の福祉”といいます。そして、公共の福祉を追求していくことがまちづくり活動であり、ここに参画するひとが「まちをつくるひと」です。

では、身近な例で考えてみましょう。あなたが住んでいるところで困ったことが発生したとします。きっと、隣近所や親しい知人に話し、場合によっては対応策を一緒になって考えるでしょう。そこで解決しないような問題であれば、町内会と呼ばれる住民自治組織に話を持ちかけ、課題を解決しようとするでしょう。しかし町内会を巻き込むとなると、単なる個人の困りごとだけでは動きません。ある課題が地域の課題として認識されることが重要になります。そして、地域共通の課題となれば、行政などの公的機関と一緒に活動することもあります。また、まちづくりの専門家や民間企業と連携できれば、課題をより高次に解くことができるかもしれません。さらに、課題の内容によってはNPO法人のように特定の社会課題解決を目指す団体との連携することもありますが、当然、社会的な意義が求められるようになります。このように、住民の発意をスタートに、課題を解決することが広く社会的利益へとつながることが重要であり、その輪の広がりに参画する様々な立場の人がまちのつくり手になりえるのです。

具体的なつくり手としては、住んでいるひと、働いているひと、商いをしているひと、大学をはじめとした教育機関及びそこに通う学生、PTA、行政等の公的機関、商工会議所や観光協会など公益団体、地域に関わる民間企業、地域福祉事業を行う団体・企業、まちづくりの専門家・コンサルタント、収益をまちに還元するまちづくり会社、地域課題解決に向けた取組みを行う団体(NPO法人や一般社団法人等)、社会奉仕・ボランティア団体、投資家や投資ファンド、創造活動通じて新しい価値を提供するひと、土地を持っているひと(地権者)、そのまちのファンなどなど、多種多様に存在します。

また近年では、二地域居住といった、異なるまちを行き来しながら生活するライフスタイルも現れました。また、居住していない地域において、なんらかの問題意識をもち、そのまちの人と一緒になって有益な活動を行うひとたちがいます。これらは「関係人口」と呼ばれています。移り住んで住民となることではなく、また、単にその地域に遊びにいくだけの人とは違った立場として、客観的な視点を有したまちのつくり手として期待されています。

ここまでみると、色々な立場の人がまちのつくり手として存在していることがわかります。

まちづくりは、単に空間やルールをつくることだけにとどまらず、それらを創造する過程において、異なる立場のひと同士、境遇や環境が違うひと同士が対話していきます。その上で、相互に理解を深め、目的に向かって進んでいくものです。そこで得られる緩やかな紐帯がまちのつくり手たちをつなぎ止めていくのです。

この問いを書いた人

まちづくり研究室

上野正也 准教授

人に学び、地域に学び、まちの未来を描く。
まちづくり研究室
まちづくり, エリアマネジメント, 住民参加型ワークショップ, 文化都市政策

この問いに関連する主な科目

  • XXXXX

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長い人類の歴史の中で、都市やまちのように集まって住む形の原型=定住がいかにして起こったのか、その起源を深ぼる一冊です。人類は有史以前、とても長い年月をかけて移動しながら狩猟を行ってきました。それが定住へと至った変革を知ることで、現代の都市やまち、あるいは社会がいかに発明的であるか、思いを馳せることができます。

「マイパブリックとグランドレベルー今日からはじめるまちづくり」田中元子 著

自分からはじめるまちづくりがあります。自分が良いと思ったことを進めるうちに、その輪が広がり、共感を生み、公共性を育てていきます。それは、自己中心的利他と呼ばれるように、自分がやりたいことを実現することで、他者や社会にとっても意味があることに繋がり、ひるがえって自分の幸福にもつながる、という概念に通じます。

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