問い 8
建築とまちはどう関係しているの?
建築とまちの関係について
建築を学び始めると、まず一つの建物をどのように設計するかという課題に注目しがちです。空間の形、素材や構造の工夫、デザインの美しさなどは、いずれも重要なテーマです。しかし、建築は単独で存在するのではなく、常に周囲の「まち」と関わりながら成り立っています。建築を考えることは、まちを考えることと切り離せないのです。
たとえば住宅を考えてみましょう。住宅は家族の暮らしを守る空間であると同時に、道路や隣家、公園や商店といった周囲の環境と結びついています。玄関の位置、塀の高さ、窓の向きといった設計上の判断は、近隣との関係やまちの景観に影響を及ぼします。つまり建築は、単なる個別の作品ではなく、社会やコミュニティの一部を構成する存在と言えます。
このような視点は、歴史を振り返るとより明確になります。近代建築の巨匠ル・コルビュジエは、「輝く都市(Ville Radieuse)」の構想やインドの「チャンディーガル計画」において、建築を超えて都市全体のデザインに挑みました。日本でも、丹下健三が「広島平和記念公園」を設計した際には、単なる記念建築ではなく都市再生を見据えた空間構成を行いました。また、槇文彦は、「代官山ヒルサイドテラス」において、段階的な複合開発と公共的空間の導入を通じて、まちと一緒に成長する建築を目指しました。つまり、建築家たちは常に建物とまちの両方に目を向け、未来の社会を形づくろうとしてきたのです。


今日のまちづくりもまた、単なる物理的環境の整備にとどまりません。人々が出会い、学び合い、支え合う「コミュニティ形成」や、次世代を育む「ひとづくり」といった側面が重視されます。学校や図書館、公園や集会所などの施設は、機能を提供するだけではなく、人々の交流や成長を促す舞台として設計だけでなく仕組みづくりが求められるのです。
このことは、身近な空間にも見て取れます。大学キャンパスでは、教室や研究室といった建物に加え、広場や食堂、図書館が点在し、それらをつなぐ道や緑地が学生同士の出会いや交流を生み出しています。建築と都市的な空間計画が一体となり、「学びの共同体」を支えているのです。また、商店街のリノベーションも好例です。古い建物を改修して生まれるカフェやギャラリー、小さな書店は、単に建物をきれいにするだけでなく、人が歩き、立ち寄り、会話をするきっかけをまちに取り戻しています。近年ではさらに、「小商い(こあきない)」と呼ばれる雑貨店や食堂などの小さな営みも注目されています。大規模な商業施設にはない、人々の交流を生み出す「まちの縁側」としての役割を果たし、地域のにぎわいや温かさを育んでいるのです。

もっと広い視点で見ると、建築とまちの課題は地域によって大きく異なります。地方では人口減少や高齢化、産業の衰退といった問題に直面しており、空き家活用や小規模拠点の形成、地域文化を活かした取り組みが求められています。ここで建築は、単なる施設更新ではなく、地域の歴史や風景を再評価し、共同体を再生する役割を担います。
一方で都市部では、人口集中や多様なライフスタイルに対応するための効率的な土地利用が進められています。しかしその過程で、既存のコミュニティや景観をどう守るかという課題が浮かび上がります。歩行者中心の公共空間づくりや住民参加型のワークショップは、こうした課題に応えるための重要な方法となっています。ここで求められるのは、設計技術に加え、人々の声を聞き、合意形成の場をつくる力です。
このように、建築とまちは互いに作用し合いながら存在しています。建築の設計は、美しい形を追求することだけではなく、「その建物がまちの中でどのような役割を果たすのか」「人々の暮らしや社会をどう豊かにできるのか」という問いに向き合う営みであり、未来の社会や人のあり方をデザインすることにほかなりません。建築に携わる私たち自身も、その物語の一部を担っているのです。
この問いを書いた人
建築保存活用研究室
塩脇祥 助手
まちの個性を発見し、デザインへと導く。
建築保存活用研究室 実証実験, リノベーション, 特殊塗装, 建築デザイン
この問いに関連する主な科目
- XXXX
この問いのヒントになるコンテンツ
見えがくれする都市―江戸から東京へ(SD選書)/鹿島出版会 槇文彦、若月幸敏、大野秀敏、高谷時

小商い建築、まちを動かす! 建築・不動産・運営の視点で探る12事例/ユウブックス 西田 司/神永侑子/永井雅子/根岸龍介/若林拓哉/藤沢百合 編著
